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その使っていない不動産、今が売り時かも?

2021.10.01

はじめに

先日、新型コロナ対策の一環として菅総理大臣が経団連に対して、テレワークなどによる出勤者の7割削減に向けての協力を要請するにニュースが流れました。
従来から日本の不動産需要は、通勤を前提として都市部や駅近郊に集中しています。
今回の申し出により通勤自体がどこまで削減されるかは今後の動向次第ですが、今まで需要のなかった地方や郊外の不動産に注目が集まっているのは確かなようです。


1、空き家・空き地等の売却に対する優遇税制

従来から地方や郊外においては、空き家を含む未利用の不動産が問題視されていました。
行政側にしてみれば、倒壊の恐れや景観・治安悪化の要因となります。

所有者側からすれば、売却しようにもそもそも需要がない事や、手数料や譲渡による税金が負担となることから、
結果的に放置したままの状態が続き無駄に固定資産税を払い続けている状況です。

そこで、税務面ではこのような土地の譲渡に対して次の優遇措置を設けています。
「低未利用地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除」(令和4年12月31日まで)
「被相続人の居住用財産(空き家)を売った時の特例」(令和5年12月31日まで)

いずれも、期限付きの特例となっていますのでご注意ください。
(特例期間延長の可能性もありますが、現状では不明です。)

2、低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除


この特例は、昔から所有しているが殆ど使っていない不動産を売却するときに有効な特例です。
令和2年7月に施行されたばかりの比較的新しい特例となっています。

内容は、個人が一定の「低未利用土地等」を500万円以下で売却した場合、譲渡所得から100万円の特別控除(最大約20万円の節税)を受けることができるというものです。
「低未利用土地等」とは、空地・空家・空き店舗の様に使用していない不動産や、
使用していても周辺の利用状況に比べ著しく利用頻度が劣っている不動産(別荘など)の事を言います。

譲渡対価は500万円以下となっています。
土地と建物を一緒に売却する場合は、土地建物の合計の対価が500万円以下である事が要件となります。
尚、共有不動産を売却する場合は、各人ごとに500万円以下の判定をおこないます。

例えば2分の1共有の不動産を1,000万円で売却した場合、一人当たりの売却価格は500万円(=1,000万円×1/2)となるため、
要件を満たすことになります。この場合、共有者それぞれが100万円ずつ控除を受けることができます。
この特例は、土地の有効利用を目的としているため、買い手側が利用すること(又は利用する見込みである事)が前提となります。
また、「低未利用土地等」であることを証明するために市区町村から確認書を貰う必要もあります。
さらに都市計画区域内の土地に限定されているため、山奥の土地などには適用はありません。
細かい要件に関しましては、国税庁のリンクを張っておきますのでそちらをご参照ください。


3、被相続人の居住用財産(空き家)を売った時の特例

こちらの特例は、一人暮らしの高齢者が亡くなった後にその自宅が空き家化するのを防ぐための特例です。

内容は、相続時から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、被相続人の自宅を相続した相続人が、当該家屋又は取壊し後の土地を売却した場合には、譲渡所得から3,000万円を特別控除するというものです。

長期譲渡所得の税率が約20%ですから、普通に約600万円(=3,000万円×20%)の節税効果が期待できます。
またこの特例は共有不動産を売却した場合、要件を満たせば共有者全員が3,000万円
の特別控除を受けることができます。例えば、親の自宅(空き家)を兄弟二入共有で相続してから売却した場合、
兄弟それぞれが譲渡所得から3,000万円の特別控除(合計6,000万円=3,000万円×2名分)を受けることができます。

相続開始時から売却予定の財産(空き家)である場合は、単独で相続するより共有で相続した方が税務面では圧倒的に有利と言えます。

この特例を受けるためには、市区町村から空き家である事の確認書を貰う必要があります。
また、建物については一定の耐震基準を満たす等の要件もあります。
さらに不動産の売却代金が合計で1億円以下である事という要件もあります。

こちらは、他の相続人の売却代金も併せて1億円以下という事です。
細かい要件に関しましては、国税庁のリンクを張っておきますのでそちらをご参照ください。

 

まとめ

空き家・空地の優遇税制を紹介していましたが、そもそも買手がいないと売買は成立しません。従来地方や郊外では、不動産需要そのものに限界がありました。
そこに今回のコロナ騒動です。
今後、経済・社会情勢がどのように変化するかはいまだ不透明な状況です。
不動産を所有し続けるにしろ、売却するにしろ市場の動向からは目が離せない状況が今後しばらく続くと考えられます。

不透明な時代だからこそ専門家をうまく利用して、ご自身の資産活用にお役立てください。

参照:

低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除
No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除|国税庁 (nta.go.jp)

被相続人の居住用財産(空き家)を売った時の特例
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁 (nta.go.jp)

 

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筆者紹介

山方越志税理士事務所 
山方越志

初めまして。税理士の山方と申します。
私は、これまで相続税の申告に50件近く携わらせ頂いてます。 相続対策も含めますと少なくとも100件以上にはなるかと思います。これは、税理士としても相当な案件数と自負しているところです。
相続実務においては、相続税の知識はもちろんの事、周辺税法・民法・社会保険料及び不動産といった様々な知識からの多角的な検討が必要となります。
その中でも、とりわけ重要なのはご家族皆さんのお気持ちの部分だと、仕事のたびいつも痛感させられます。

節税のアドバイスは当然のこととして、何よりも「その人の大切な物が大切な人に引き継がれていくことのお手伝い」をモットーに業務に携わらせて頂いております。

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